静岡の旅、2日目は掛川市の「ねむの木学園」へ。
とはいっても、学校をたずねたのではなく、そこに一昨年に建てられた私の
大好きな建築家・藤森照信さんの設計する「ねむの木こども美術館」を見に
行ってきたのです。
ねむの木学園という名前はもちろん知っていました。
でも、実際に「ねむの木」を訪れるまでこんなステキな場所だったなんて、まっ
たく知らなかったんです、私。
茶畑が広がる80ヘクタールもある広大な山村の中に、もともと住んでいた村の
人々と「ねむの木」のさまざまな施設が混ざり合って共存している、素晴らしい
福祉村なのでした。
学園の子供達が自立をめざして働くガラス屋さん、喫茶店、毛糸屋さんなどが
村のあちこちに点在していて、歩道は犬の散歩をしている夫婦が歩いていたり、
畑ではおじいさんが農作業をしていたり…。
日本の養護施設に感じてしまいがちな閉ざされてる印象がまったくないのね。


【ねむの木こども美術館】は学園がある場所から、さらに20分ほど山道を歩い
た山の上に立っていました。この屋根の形から、子供たちや村人が「どんぐり」
とあだ名を付けて呼ぶ美術館。白い外壁に描かれた草花の絵は学園の子供
達がみんなで書いたのだそうです。めちゃ、かわいいね~~。
美術館の中には学園の子供達の絵が展示されています。
それが本当に驚くほど、素晴らしいのです。
障害者とか健常者とかそういうのなしにして、どの絵も、色彩センスから構図、
テーマ性、そのどれをとっても、れっきとしたアーティストの作品だと思いました。
私は絵を描くのが苦手なので、彼らの絵に感動すると同時にその才能に嫉妬
心さえおぼえてしまうほどでした。
中でも、ほんめとしみつ君と
ほんめつとむ君という2人の
作品は、それぞれが独自の
世界観をしっかりと確立させ
た画風で、私はすっかり魅了
されてしまいました。
つとむ君の絵はエルメス社が
購入したとのこと。
(←2枚ともとしみつ君の作品)
美術館を出て、喫茶店で美味しいカレーをランチにいただき、それから【吉行
淳之介文学館】へ。
それほどこの文学館には興味はなかったのだけど、美術館との共通入場券
だったのでせっかくだから、と入ってみたのです。すると、受付の女性が、
「今日は奥の茶室で、学園の子どもの、ほんめとしみつ君とつとむ君が茶席
を設けていますので、もしお時間があったらいかがですか?」と言うではあり
ませんか。
「えっ?あの絵を描いたほんめ兄弟に会えるの?」と思ったらいてもたっても
いられない気持ちになって、茶道の作法をまったく知らないというのにちゃっ
かり参加させていただくことに。
茶室に入ると、私とそれほど年が違わなそうな男性が凜とした袴姿で座り、
私達を出迎えてくれました。
そして、床の説明(床は宮城まり子さんの書いた短冊、花は山で摘んだばか
りという可憐な水仙でした)を一通り。
そのあとすぐ、私達が超シロウトだと察したのか、
「どうぞ脚をくずして、ラクにしてください。楽しんでいただくのが一番です」
と優しく声をかけてくれました。
というわけで、その彼の男性らしく清々しく力強いお点前(手足が不自由だと
はとても思えない美しい所作)と、私達のダメダメな姿が対照的なお茶会と
なったのでした。
お茶をいただきながら、学園のみんなで横浜にコンサートに行かれたた時に
食べた肉まんが美味しかったこととか、まりこさんの優しさとか、今年の春に
展覧会をする金沢21世紀美術館のこととか、いろいろな話をしました。
あの茶室で過ごした時間はとてもおだやかで心地よかったな…。
その男性が、「僕たちねむの木のこどもたちはしあわせだけれど、世界には
しあわせでない子どもたちがたくさんいて…」というのを聞いて、自分たちが
自分たちのことを、あんな素直に、さらっと「しあわせだ」と言える人が、今、
世の中にどれだけいるのかなって思ってしまい、こっそり胸が熱くなってしま
う私なのでした。(お茶が熱かったからではけっしてなく)
最後に茶室を出る間際、どうしても聞きたかったので「あの、お名前は…」
とたずねると、その彼から「としみつです」という返答がありました。
あぁ、あの絵のとしみつ君は、この人だったんだね。(感動…)
「春の桜の咲く頃にまた
ここでお茶会をやります。
ぜひ来てくださいね。」
と言っていただけて。
今年の春にはまた来れ
るかどうかはわからない
けれど、今度、お茶会に
来る時までには、最低限
の作法をちゃんと学んで
からいくぞって胸に誓った
私なのでした。
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