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『潜水服は蝶の夢を見る』

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昨日『潜水服は蝶の夢を見る』という映画を観てきました。
フランスのファッション誌「ELLE」の編集長として華々しく多忙な日々を送っていた
主人公ジャンは、そんな誰もがうらやむ人生から一転、脳梗塞になり、左目のまぶた
以外の動きがまったく効かない全身麻痺という状態に陥ります。
その彼が、その左目のまばたきだけで自伝小説を綴った、その小説の映画化です。

良かったー。私この映画、かなり好きです。
何しろ、難病モノにありがちな「お涙ちょうだい」的な生真面目なところがいっさいなく、
ユーモラス(といってもかなりシニカル)だし、かなりクールでさらっとしてるのね。
もちろん主人公は絶望の淵に立たされ、むしろ死んでしまいたいと悲観にくれもする
のですが、自分のこの体験を出版しようと決意したときから映画が輝きはじめます。

すごいよなぁ、左目のまばたきだけで自伝を書くなんて。まばたき20万回ですよ!
できるもんじゃないですよ、ほんとうに。私にはまず無理だなと思ったし。

カメラワークがおもしろくて、スクリーンがそのまま主人公の目線なのです。
主人公が左目をまばたきするときはスクリーンも真っ暗になるし、彼が左目で見てる
周囲の様子だけがスクリーンに映るので、映画を観てるだけで彼の感情を追体験
しているような感覚になるのです。

男の医者が毛穴のひとつひとつがわかるほど顔を近づけてくるのはなんとも気分が
悪い。けれども顔を背けることが出来ないのです。身体が麻痺しているから。
また、とびきり美人の理学療法士のシャツの胸元なんかがちらりと見えたとしても、
手で触ることも、声をだして口説くこともできないんです。ついこのあいだまで超一流
の女をとっかえひっかえしていたプレイボーイだったのだからそれはまるで拷問(笑)。
観てるこっちまでが主人公の身体になんともジレンマを感じさせられるのです。
全身麻痺の辛い状況、その不自由さがイヤというほど伝わってきてたまらなかった。

でも何より、私がこの作品で最高に良いなと思ったのが、主人公のジャンがどうしよ
うもない男だというところでした。聖人でも英雄でもまったくないわけです。
自分大好きなろくでなしで女ったらしなんだけど、たまらなくチャーミングなのです。
あぁ、こういう人を女はほっとかないよな~って。
実際、全身麻痺になって左目しか動かないのに相変わらずモテ続けてるし。

こんな病気になって、愛人が原因で別れた妻(といっても事実婚で籍は入れてない)
にかいがいしく看病され、可愛い子供達が見舞にきてくれても、この映画ときたら
「大病を患って初めて家族の有難味が解り、改心するのであった」というストーリーに
はまったくならないんです。

さすがフランス映画だ、男と女の国だ、としみじみ。

こんな主人公のことを好きになれるかどうかで、この映画の好き嫌いかが分かれる
ような気がしました。

私個人的には、会う人すべてにすすめたい作品なんですけど、ね。

音楽もよかったなぁ。楽曲リストを見ただけでそのセレクトセンスがわかると思います。
特に、私のフェイバリットアーティスト、“ウルトラオレンジ&エマニュエル"が印象深い
シーンで使われていて思わず「ナイス!」と心の中でにんまりしてしまいました。

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コメント

エマニュエル、映画にも出てるのね?
フランス映画は女の人がきれいで好きだな。大人の女で。皺が美しいのよね。

この映画、予告で見て、見たいなあと思ってたのです。
ぜひ、見なくちゃ。

投稿: kimi | 2008年2月23日 (土) 23時56分

■kimiさん
そうそう別れた内縁の妻という役で。色っぽかった…。
こんなきれいで優しい奥さんと子供3人と別れて、愛人とウハウハですよ、このジャン
って男は。でも魅力的なんだけどね。
まぁ、そういうふうに自分の気持ち、やりたいことに忠実に自分勝手に生きてきたから
こそ、主人公の素晴らしい想像力、創作力に繋がっていくという事実があるのだけど。
やっぱ小説家とかはそういうふうな生き方のほうがイイ物を作るのかなぁ…。

投稿: ok | 2008年2月24日 (日) 12時17分

これ、タイトルがそそるよね
金沢は3月末公開だけど
シネコンでやってくれるから楽しみ

投稿: ワシ | 2008年2月25日 (月) 09時39分

■ワシさん
私、この監督の前作『夜になるまえに』がヶっこう好きだったので、よけいにこの映画は
見たかったのです。
映像も良かったよぉ。主人公の想像した世界がキラキラ輝いていてファンタジックで、
まさに蝶の夢のような感じでしたわ。
私も地元のシネコンで見たの。
これからそこのシネコンのラインナップを見たら、ウォン・カーウァイの最新作(ノラ・ジョー
ンズ主演の)もダージリン急行もやるみたいなのでたいへん楽しみでございます。

投稿: ok | 2008年2月25日 (月) 11時32分

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