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『カポーティ』

Photo_49フィリップ・シーモア・ホフマンの抜群の演技力が評判の
『カポーティ』を見てきました。

見終わった後もしばらくズーーンと胃のあたりが下に落ち
シートから立ち上がれないような後味。(いい意味で…)


実は私、『冷血』読んでないんですよね。(映画の『冷血』は観たんだけど。)
だから、映画を見終わって、そのまますぐに本屋へ行って『冷血』買ってしまいました。
あんなふうにして書き上げた小説だったんだと思うと読まずにはいられないもの。

カポーティについては、「ゲイでセレブでパーティフリークなニューヨーカーでその挙句
アル中で死んだ作家」というイメージしか持っていなかったんだけど、この映画を観て
たら、アル中にもなるわなー、と納得してしまいました。
むしろ普通にあのまま生きて行けたら、そのほうがおかしいのでは?
と考えると、あの後から小説をひとつも書くことができなくなってしまったまま死んで
しまったカポーティには、冷血でない温かい血がほんの少しは流れていたということ
かもしれないけれど…。

中盤まで淡々と時間が流れていく映画なのですが、NYでまだ最後まで完成されて
ない『冷血』の朗読会が開かれたあたりから、俄然ストーリーが緊張感でゾクゾクす
るほどに面白くなってきます。まさに息をのむ感じで…。

ホフマンの演技力はもちろん完璧といっていい出来だったのですが、それにも増して
カポーティの親友で取材を手伝うネル役のキャサリン・キーナーの演技が絶品です。
ネルは後にカポーティと絶縁してしまうらしいのですが、映画の端々でそれを感じるの
です。誰よりも(彼の恋人よりも)カポーティを理解し、協力し、心配し愛しているけれど、
それでも付き合いきれないというか、理解できないというか…。彼が人間である前に、
自分しか愛せない“作家”であることにに愛想を尽かしてしまったんだろな。
ラストに彼女がカポーティに言った言葉がね。(ここでは書きませんが)。辛い、痛い。


というわけで、来週の通勤の友は、『冷血』になりそうです。

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コメント

いつものようにズレたコメントで恐縮ですが、
自分を愛せない人に人を愛することはできない、という話を何かで読んだ記憶があり、それはそれで納得したんですが、それが他人にまで広がらないのはなんでそーなるんでしたっけ?
と、書いてる自分も、しばしばそーなる感覚に陥るのですけれども。。。。。

投稿: 69 | 2006年11月12日 (日) 22時45分

■69さん
>自分を愛せない人に人を愛することはできない、

それはその通りなのかもしれないですよね。そもそもそういう人はそんなものは必要じゃないのかもしれない、と思ったりして。

私がこの映画を観て思うに、カポーティは1人の人間としているうちは他人を愛することは出来るんですよ。でも、1人の人間でいるより“作家”であるカポーティなわけで、そうなってくると、よりすぐれた小説を上梓するためならなんでももやる、という気持ちが勝ってしまうのです。
劇中、犯人から(小説を書くために)自分を利用しているのではないかと問われ、
「本当に愛する人を、自らの目的のために利用することはできるのか?それはできない」と涙をうかべてカポーティが答えるのですが、それは小説を書き続けたいがためのウソな
わけです。(そこで犯人に拒絶されたら取材が続けられないから)
そして、それがウソだとわかってしまう私達も、「人間は相手を本当に愛し涙を流す事さえ
できるのに、その相手を、裏で裏切ることもできる生き物なのだ」ということに心のどこかで
気づいているのかもしれません。面倒くさいっすな、人っつうものは。

投稿: ok | 2006年11月12日 (日) 23時08分

私は「冷血」を読んでから映画を見ました。本は最初はなんだか進行がゆるくて、途中で一度投げ出したくらいでしたが、これも後半に入ってスピードがあがってきます。そう、映画と同じように、、。
なんかね、この映画と本をリンクさせてしまうと、彼がどういう心境でこの本を書き進めていったのかかんぐってしまうことも多くて。それからタイトルの「冷血」というのも実は自分のことを言っているのではないかとかさ。

投稿: うT | 2006年11月13日 (月) 20時53分

■うTさん
高校生の頃、名画座で『冷血』見て、あまりの怖さに立ち直れ無くってね。
バイオレンスなシーンとかはそんなに無かったんだけどとにかく怖かったの。
(もともとクインシージョーンズが音楽を担当してるというのと、白黒のポスターが
かっこ良かったからというミーハーな気持ちで見た映画なんで…)
だから原作を読もうなんてとてもその頃は思いもしませんでした。^^

少し読み始めたけど全然あの一家、殺されないのねぇ。
(読んだ人から「2/3読んでもまだ殺されないよ」と言われてびっくり)

投稿: ok | 2006年11月13日 (月) 23時32分

あー。ねー。
んで、さらにズラしてなんですが、ごく個人的には、8割ほかのことを思っていても、2割しか思ってない方を(その方がその場でいいと思えば)口にする(しかねない)人間なので、それを「嘘」「裏切り」とは思わない、思ってないっす。たぶん。

投稿: 69 | 2006年11月14日 (火) 03時25分

■69さん
> 2割しか思ってない方を(その方がその場でいいと思えば)口にする(しかねない)人間

大人ですからそういうこともあるでしょうとも。
社会人ともなれば、場の空気を読んで発言することもしばしば。
思ってもないこといけしゃーしゃーと(←昭和語)言える人も多いわけだし、
2割でも思っているならば誠意があると言えなくもないと。

投稿: ok | 2006年11月14日 (火) 10時24分

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